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コラム

成年後見制度を考える(1)-成年後見制度の利用状況について-

最初に、成年後見制度とは、認知症や知的障がい等により判断能力が不十分な方について、ご本人の意思を尊重しながら財産管理や身上監護を行い、法律的に保護し支える制度です。

 

成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度が整えられており、現在日本では「法定後見制度」の利用が圧倒的に多い状況です。次に、「法定後見制度」と「任意後見制度」の違いについて説明します。

「法定後見制度」は、既に判断能力が低下し始めた方を対象とした制度で、「補助」(判断能力が不十分な方)、「保佐」(判断能力が著しく不十分な方)、「成年後見」(判断能力を欠く常況にある方)の3つの類型があります。法定後見制度を利用するためには、家庭裁判所に申立をする必要があり、法定後見の申立のうち7割以上を「成年後見」が占めています。

「任意後見制度」は、あらかじめ判断能力がある時期に、将来財産管理や身上監護をしてもらいたい人と公正証書による任意後見契約を結び、判断能力が低下したときに支援をしてもらう制度になります。

 

法定後見制度の内でも「成年後見」が、成年後見制度で最も利用・申立されていることは、前述しましたが、なぜ家庭裁判所に成年後見の申立が多いのか、最高裁判所事務総局家庭局と厚生労働省の資料から読み解いていきましょう。

申立をしようとしたご本人の判断能力の低下原因として、1番目は認知症によるもので全体60%程度を占め、2番目に知的障がいと統合失調症の約9%、3番目に高次脳機能障で約4%と続いています。また、申立時のご本人の年代を見ると70歳以上の高齢者が全体の60%以上を占めており、認知症を患われている高齢者の方について成年後見の申立がなされていることになります。

 

次に成年後見の申立理由は、1番目の理由として預貯金等の管理・解約が挙げられます。金融機関では預貯金等の解約の際に本人確認や振込詐欺を防ぐためにご本人の意思確認をするなどして非常に厳格に対応しているため、ご本人の判断能力が不十分と金融機関が判断すると、ご本人に法定後見人(保佐人・補助人)をつけて解約等の手続を行ってくださいということになります。2番目は身上監護を理由とするもので、ご本人の治療・入院手続、施設への入居契約があげられます。3番目は介護保険契約、4番目は不動産の処分、相続手続、保険金受取と続きます。契約行為については、監督官庁による指導や業界団体のガイドラインの順守、コンプライアンスの徹底により、ご本人の判断能力が十分でない場合は契約を結ぶことができないことより、成年後見(保佐・補助)の申立につながることになります。

 

次に、家庭裁判所における法定後見(保佐・補助)の申立人の属性について述べていきます。法定後見(保佐・補助)の申立ができる人は、民法ではご本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、保佐人、保佐人監督人、補助人、補助人監督人、検察官と規定されているほか、市長村長が老人福祉法や知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律にて、申立ができる者として規定されています。申立人の約20%はご本人、約52%は配偶者や四親等内の親族、約23%が市町村長の申立となっています。市町村長による申立件数が多い理由としては、自治体の高齢者や障がい者を支援するような部署が関与してご本人の生活支援を行っているためです。

市町村長の成年後見の申立が全体の4分の1を占める理由として、核家族の世帯が増えていることや四親等内の親族が近くに住んでおらず、日常的に自治体の職員による支援等を受けていることが考えられます。今後とも独居の高齢者が増えるとされていることより、市町村長による成年後見の申立も増加することは目に見えています。

 

現在、成年後見制度を利用している高齢者は、全高齢者の2%程度であると言われています。本来ならば成年後見制度を利用すべきところ、親族がご本人に代わり財産管理や身上監護をやっていて支障がないから申立をしない、成年後見人(保佐人、補助人)として士業等の第三者が選任された場合に報酬が発生しご本人の財産が報酬のために目減りしてしまうから利用したくない、ご本人が認知症により判断能力が低下している自覚がなく医師の診断を受けたくないという理由から申立をしないという話をよく聞きます。

 

認知症により判断能力が低下した高齢者は今後も増えることから、法定後見の申立数も年々増えていくでしょう。また、将来に備えて判断能力が低下したときに備えて任意後見契約の件数も増えていくと思われます。

大田行政書士事務所では、横浜市・川崎市を中心に神奈川県・東京都にお住まい方で成年後見や任意後見契約に関するご相談等を承っていますので、お気軽にお問い合わせください。

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